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オートバイの旅日誌(18) USA [3-USA]

オートバイの旅(玉井洋造の旅1976) 日誌


(18)-1976/10/07 USA


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1976/10/07      バイクの選択
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 USハイウェイ421号線からケンタッキー州に入る。さらに42号線を通ってルイビルに行く。だいぶ南下したものの、やはり寒い。空はどんよりと曇り、12時ごろでも4時過ぎのようなに感じられる。
 昼すぐにバイクの調子が悪くなってきた。6000回転以上回らなくなった。アフターファイヤがすごい。(今夜はまたポイントとプラグを調べてみなくては・・・。)
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 ケンタッキー州は、やはり馬の土地だった。牧場の中でよく馬が遊んでいるのを見かけるようになった。
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 カナダでは、人の手がまるで入っていない大森林が、いたる所にあったのに、アメリカでは森なんでどこを探しても見当たらない。時おり、小さな林があるぐらいだ。畑と牧草地ばかりだ。よくまあ、こんなに広大な大地を開拓したものだ。おかげで私の寝場所がない。日によっては、バイクを停めて昼飯を食べるところさえない始末だ。
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 この頃は、キャンピングカーもバイクツーリストもあまり見かけなくなった。もう冬なんだ。バイクで走っているのは私ぐらいだ。早く暖かい土地へ行きたい。
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 6時になると暗くなってしまった。川岸で寝ながら、バイクの選択に関して考えた。いつも100キロ以上のスピードを出しているから、回転数が高く、ポイント、プラグの整備が大変だ。これを考えると、マグネット点火の方がよいようだ。スペアーパーツに関しては、単気筒の方が部品数が少なくてよい。第一安上がりだ。
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 アメリカでは、ロードタイプの排気量に関しては、250ccより400ccクラスの方が、よく市場に流れていて、パーツの入手も簡単である。400だったら回転数をあまり上げる必要もないし、エンジン関係の部品の消耗も少ないだろう。
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 2サイクルのバイクに関しては、たえずエンジンオイルの補給が必要で、いつもオイルを携帯していなくてはならない。また、2サイクルオイルは高い。そして補給するとき、シートの下だから荷物を全部おろす必要がある。しかし、4サイクルもタペットやバルブの調整の仕事が増える。
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1976/10/09    2万キロの点検
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 夜中に雨が降ったが、朝には良い天気になっていた。しかし、走り出すと、やはり足先が痛いほど寒い。メンフィスへ急ぐ。
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 アメリカの交通信号は見にくい。たびたび信号無視をしそうになった。日本だっら信号機のあるところには、白線があるのだが、こちらは何もない。停止ラインさえないのが普通で、ただ、センターラインが切れているだけだ。また見にくい原因の一つは、信号機の位置が決まっておらず、探さなくてはならない。両サイドの歩道の上にあったり、交差点の真中にあったり、上からぶら下がっていたりする。
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 もう一つ、アメリカの町で気が付いたことは、その不経済な町の構成だ。人は車に乗って移動するのが常識になっているので、100メートルの距離でも車に乗っていくように思われる。買い物も車で行くのだから、近くに店がある必要がない。だから、町の郊外の山の中にカーペット屋があったり、バイクの販売店があったりする。
 町の密度は非常に低く、平屋の店がだらだらと続く。店と店との間隔は非常に離れていて、1つ1つの店の敷地が非常に広い。とても商店街といった形態ではない。また、店の看板が大きいため、全体として非常に粗雑な町の印象を受ける。
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 メンフィスの50キロ手前で空地を見つけ、1時頃だったが、早々とキャンプすることにした。いつも寝場所を探すのに苦労するので、昼を過ぎたら探し始める習性が付き、キャンプする時間がだんだん早くなってきた。
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 アメリカには、もちろん立派な有料キャンプ場がいたるところにある。「KOA]という大きな組織があり、全米でハイウェイを走っていると簡単に見つけることができる。キャンプ場内にはシャワー室、水洗トイレ、コインランドリーなどの共同施設の他に、それぞれの場所には水道栓や電機のコンセントがある。ほとんどが大型キャンピングカー用に作られている。
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 テントを張り終えてから、すぐにバイクの整備を始める。2万キロの点検だ。シリンダーヘッドを外してピストンリングのチェックとカーボンの掃除だ。安い船外機用のアウトボードオイルを使用していたので、エンジンは過熱気味だったらしく、ピストンには全くカーボンの付着がない、乾燥した褐色の色だった。ピストンピンにはすこし筋がはいっていた。
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 地面の上での作業だ。風が吹いたりするたびに、砂が飛んでピストンやシリンダーにくっついた。また、暗くなる前に終えなくてはならないので、まったく落ち着いてできない。
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1976/10/10    綿畑
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 朝6時、まだ真っ暗だが、あと30分もすれば明るくなるだろうと出発の準備にかかる。すべての荷物をバイクに乗せ、ゴムひもを回しているとき、足場が悪かったらしく、バイクが横倒しになった。いつもは、なんとか立てるのだが、今朝は力が入らない。荷物を全部おろす。目が覚めたばかりで、気合が入っていない。次の瞬間、今度は反対側にひっくり返った。こんなことをしていて、バイクの上に荷物を固定し終えたときは、もうくたくたになってしまった。
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 昨夜の整備で、ミッションに少し砂が入ったようなので、オイル交換を次の町でやった。
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 リトルロックに近づくにつれ、綿畑が増えてきた。住民は貧しいようだ。カーリスルの町で空地を見つけた。道路の反対側に男がいたので、キャンプのことをたずねてみようと思って、近づくと、男は逃げてしまった。よそ者がこわいのだろうか。今までのアメリカと、ずいぶん様子が違う。
 その後、家から別の男性が出てきて、キャンプを許してくれた。その家も貧しかった。
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 その空地はごみ捨て場だった。あちこちから白い煙が上がっている。そんな中でテントを張り、スペアパーツの点検をする。長い間、雨中の走行が続いたので、ほとんどのパーツに錆が浮いている。シリンダー、ピストンリングも錆びていた。削ったり、オイルを塗ったりしているうちに暗くなってしまった。
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 朝の寒さは厳しいが、昼過ぎの日差しは強くなり、朝のままの姿では暑いぐらいになった。

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