SSブログ

オートバイの旅日誌(14) カナダ [2-カナダ]

オートバイの旅(玉井洋造の旅1976) 日誌


(14)-1976/09/17 カナダ


FH000016.jpg

- 
1976/09/17    マルショウ
- 
 トロントに近づくにつれ、大雨になった。フルフェイスのヘルメットを被っているので、顔が濡れないからそう気にならないが、下着までずぶ濡れになった。昼にトロントに到着して、カナダヤマハに寄ってみた。パーツ係りのテッドと親しくなり、この週末を彼の家で過ごすことになった。
-
 テッドは非常にバイク好きの青年だ。雨の日もXT500に乗って会社へ行くぐらいだ。彼の家は団地にあり、妹夫婦と一緒に住んでいた。彼の奥さんもバイクに乗る。その家の4人がバイク狂いである。ガレージには4輪車がなくて、バイクでいっぱいだ。彼らが普段使う4台のバイクの他に、いま整備中のバイクが2.3台あった。テッドは、「マルショウ」という日本製のBMWのコピー車を持っていた。
- 
1976/09/19   結婚パーティ
- 
 土曜日なので、みんな昼頃から起きだしてきた。テッドが一番最後だ。昨夜は一時過ぎまで私と話し込んでいたからだ。昼まで私は自分のバイクの整備をした。テッドはバイクに非常に詳しい。いろいろとメカニックについて聞くことができた。
-
 昼からモールという百貨店のようなところへ連れて行ったもらう。一つの屋根の下にたくさんの商店が並んでいる。彼らは食料品以外は非常に高いと言っていた。その値段は日本と同じようなものだった。バイク用品は非常に高いらしく、彼らは私が教えた日本での価格にため息をついた。でも彼らはなかなかいい生活をしていた。ある青年は私よりも年下の22歳で、月給は千ドルだという。
-
 その日の夜、テッドの友人の「結婚パーティ」連れていかれた。結婚式の前に、男だけ、女だけの独身最後の日のパーティをやるようだ。結婚を祝い、そしてまた、結婚式の費用を集めるうまい方法だ。
-
 すべてセルフサービスで、冷蔵庫から好きなものを勝手につまみ出して、食べたり飲んだりする。パーティの終わりはブルーフィルム鑑賞で、独身最後の日をしめくくる。
-
 次の日、4人で郊外のドライブへ出かけた。幹線道路はつまらないので細い田舎道を行く。みんなは非常に速い。このとき私は、久しぶりに空身のバイクの乗ったのだが、いつもと違ってバイクがあまりにも軽いので非常に不安に感じられた。つまり軽すぎるのだ。
-
 130キロのスピードになったとき、ハンドルが激しく揺れ始めた。ハンドルを押さえても停めることができない。ブレーキを使うとさらにひどくなりそうだったので、自然にスピードが落ちるまで我慢した。バイク全体のバランスが崩れてしまったようだ。
- 
1976/09/20    寒さがこたえる
-
 この日も大雨。オタワに通じる401号線までテッドが送ってくれた。往復10車線のハイウエイだ。通行中、エキスプレスというサインが目に入り、何だろうと思った。ハイウェイの中での特急車線で5車線のうち中央寄りの2車線をガードレールで囲ってある。通過する車と、短距離のだけハイウェイを利用する車とを分けていた。すごい雨で全身濡れてしまった。
-
 毎日のように雨合羽を着ているので、ゴムの内張りがほとんどはがれてしまっている。
-
 3日もテッドの家にいて身体がなまっていたので、寒さがこたえる。そうそう切り上げてピクニックエリアでキャンプ。
- 
1976/09/21    日本大使館
-
 夜明け前に目がさめてテントの天井を眺めていたら、ガチャンという音とともにテントが揺れた。地震ではない。熊がバイクに体当たりしたかな、と思った。寝袋から出ようとしたが、こういう時に限ってチャックやひもがなかなか外れない。外に熊がいないかと、恐る恐るテントのチャックを開けて外を確かめた。
-
 バイクが倒れている。ガソリンの匂いがして、音をたてて流れ出している。すぐには出られない。熊がいたら大変だ。毎日の雨で地盤が緩んで、バイクが倒れたらしい。頭の上でなくてよかった。
-
 寒さがきびしくなったので、またカフェーで休むようになった。
-
 コーヒーを飲み終えて店を出ようとした時、ヘルメットを手にした若者が入ってきた。目が合って、なぜか自然にヤーと声を掛け合った。ヘルメットを持っているだけで、お互いに同じ仲間という意識が生まれるのだ。彼は南アフリカの青年で国を出てから5年目だという。南アフリカ、イスラエル、フランス、イギリス、そしてカナダにやってきたという。中古のバイクを買って、カナダの旅が始まったばかりだった。
-
 彼は旅先で知り合た若者たちの家を訪問しながら旅をしているらしい。ケベックやクリーブランドの友人の住所を教えてくれた。一泊できるだろうという。外国の若者たちは、友人の住所をお互いに教えあって旅行しているのだろうか。私には、そんな全く知らない人の家へはいけない。小さな家に大家族が住んでいる人もいるだろうし、ましてや、とつぜん汚れた姿をした旅行者が夕方、訪問して来たらどう思うだろうか。こちらの人は、友人の友人だからといって大歓迎するのだろうか。
-
 オタワに着いて、日本大使館を訪問した。町の真中だが、探すのに一苦労した。ビルの10階の一部が日本大使館で、そこのドアは金庫のようだった。もちろん直接には入れない。壁のインターホーンで要件を告げるようになっている。私宛の手紙が届いていたら受け取りたいといったら、そんなものは届いていないと、門前払いだ。
- 
 町はずれのキャンプ場へ行く。シーズンオフで無料だった。


-



共通テーマ:バイク