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オートバイの旅日誌(3)アラスカハイウエー(canada) [1-アラスカハイウエー]


オートバイの旅(玉井洋造の旅1976) 日誌


(3)-1976/08/13 アラスカハイウエー(canada)


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1976/08/13  コーヒー


 朝、走り出してすぐ雨が降り始めた。道路の表面は水でぬるぬるしており、たびたび前輪が横へ滑走して冷や汗をかく。タイヤもエンジンも泥まみれだ。滑りやすいところは両足を出して進む。約60キロのスピードで上り坂を走っているとき、水をふくんだ土砂を踏んでしまい、とうとう転倒。バイクの排気パイプに足をはさまれてしまった。
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 一人では起き上がれない。ガソリンも流れ始めた。パイプの熱も伝わり始めたので、荷物を外そうともがいていたら、車の近づく音がして、二人の男に助けられた。二度三度転んだ末、やっと坂の上までバイクを押し上げてバイクの点検をする。エンジンのガードパイプが折れ曲がっただけで、ブレーキレバーは折れていなかった。取り付けを極端に緩めておいたのが良かったようだ。私自身は皮ズボンを着ていたので、膝を少し擦りむいた程度だが、雨合羽が使えないぐらい裂けてしまった。この日は250キロの走行で、ホワイトホースの手前でキャンプする。
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 次に日は、昨日とはがらりと変わって、路面は固く、スピードがどんどん上がって100キロ前後になる。そいう所に限って事故車がある。ボンネットと屋根が押しつぶされ、ぺちゃんこになっている。
 丘を越えると、また路面工事だ。散水車が水をたっぷりと撒き、ブルドーザがせっせと路面をかき混ぜ、泥道になっていた。両足を出して慎重に進んだが、たちまち転倒してしまった。
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 やはり自分でバイクを起こせる重量にしなくては、とても南米からアフリカへ行けないだろう。今回の損害は、左側のガードパイプが曲がり、足のつま先が当たってチェンジ操作が不可能だ。足で蹴っとばして、足が入るようにした。
 工事箇所を抜け出し、アラスカ州へ流れていくユーコン川を渡り、ホワイトホースから100キロ先の村でキャンプする。
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 夕方、その近くの家の人が私のテントを見つけ、お茶を飲みに来るようにと誘ってくれた。森の中の小さな木造の家だった。主人は非常に訛りのある英語を話し、ひげは伸ばし放題、山男みたいだが,優しい人だった。夫人は、やや冷たい感じだが、ゆっくりときれいな英語で話してくれた。私たち3人の会話を、4歳になる男の子が黙って聞いている。楽しくて2時間も話してしまった。カナダに日本製品が多いこと。カナダの冬のこと、両国の物価高のついては興味深い話ができた。
 次の日の朝、起きて出発の準備をしていると、家の人がコーヒーを飲まないかとまた誘ってくれた。その家のあるヘインズ・ジャンクションからは、雪をかぶったセント・エラス山脈が望まれた。
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 いい天気になったが、少し寒い。ガソリンの補給をしたついでに、カフェーに入った。1杯をコーヒーを飲みながら日誌を書いていると、女主人は頃合いをみては、お替りをしてくれた。計4杯。コーヒーだけで腹がいっぱいになった。その後は遠慮した。もちろん代金は1杯分だ。しかし、いつもこうはいかない。私の姿もだんだん汚れてきて、店に入るやいなや、ザックをドアの外へ置けといわれ、まずいコーヒーを飲むこともしばしばであった。コーヒーしか飲まない人はあまりいないのだ。
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 昼から雨が降ってきた。また、転倒するかもしれないと、ハンドルグリップを強く握ってしまう。泥を浴びたチェーンは伸びるのが非常に早い。歯車をかんで、いやな音がする。
 この日の宿泊地はカナダ最後の町ビーバークリークだ。税関とモーテルがあるだけだ。ガススタンドの横の空き地でキャンプする。
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