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オートバイの旅日誌(13) カナダ [2-カナダ]

オートバイの旅(玉井洋造の旅1976) 日誌


(13)-1976/09/12 カナダ


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1976/09/12            スタンドマン
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 サンダーベイに近づくにつれて、針葉樹林から紅葉樹林に変わってきた。しかも紅葉が始まっている。冬がもうそこまで来ているのだろう。
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 尻が痛くなったので、少し早いがピクニックエリアでキャンプ。若者二人が話しかけてきた。サンダーベイからピクニックに来ているとという。他の6人の仲間にも紹介された。ビールを飲みながら話して過ごす。4人の若者はそれぞれ自分のワゴン車を改造して、冷蔵庫、ガスレンジ、ベッドを置いている。そして運転席には、市民ラジオ(携帯無線機)を取り付けていた。その車で、暇さえあればあちこちへ出かけるそうだ。ベッドもあるのでホテル代もいらないという。
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 東へ近づくにつれ、人も若者の態度も変わってきた。スタンドマンの態度も悪くなり、ドライバーのマナーも悪くなった。交通量も増えた。注意していこう。
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1976/09/13    スペリオル湖
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 朝から雨だ。100キロ近いスピードで進む。鼻に雨が当たり非常に痛い。ゴーグルのガラスの表面を雨が流れ、非常に見にくい。危険だと思うが、後ろから車が迫ってくるので、100キロで進まざるをえない。追い越されると水しぶきを浴びて、さらに前ぽが見えなくなる。
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 ゴーグルからフルヘルメットのシールドに変える。一度も使っていなかったものなので、よく水をはじき、前方が見えやしくなった。
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 寝場所を探しながら進んでいるとき、スタンドの人に州立公園へ行けばよいと教えられた。夏を過ぎた9月10月は利用者がいないから無料だという。そこはスペリオル湖畔にあるキャンプ場だった。テントをどこにはるか決める前に、雨に濡れて寒かったので、木の下で食パンをかじる。うまい。7枚も食べてしまった。
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 今日初めて車の音を聞かずに眠れるかと思ったが、スペリオル湖の浜に打ち寄せる音は意外とうるさいものだ。テントの中はさらに響く。
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 今日もリス君の訪問を受けた。こんなに人馴れしていてよいものかと思うぐらい、近寄ってくる。テントの中に入ってくるし、持っているノートの上に乗るし、困ってしまう。こちらは息を殺して、その仕草を見守るしかない。
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1976/09/14    ジョジェは頬に
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 冷たい雨だ。濡れた靴を履いて出発する。寒さが非常にこたえて、手足の指先が痛む。耐えられなくなって、ガススタンドのカフェーに飛び込んだ。店に人は、今日は特に寒いという。今年は冬が早いらしい。コーヒーを一杯飲んで、やっと指の先の痛みが取れた。日本を出発する前にけがをした右手親指が特に痛んだ。
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 それからだいぶ走り続け、あるピクニックエリアで休んでいると、同じバクの旅行者がやってきた。バイクはヤマハRD400で、私と同じおモデルだが、私のはRD250だ。そんなことですぐに親しくなった。
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 彼も寒いのだろう。持っている衣類すべて着こんで、丸々としていた。そのため雨合羽ははちきれている。また、ズボンの下から風が入らないようにビニールテープで足首を巻き付けていた。
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 私たちが話しているところへ、大きなキャンピングカーの老人が、コーヒーでも一緒にどうだ、と言って誘ってくれた。すごく大きなキャンピングカーだ。11トンぐらいある。老婦人は芸術家で、旅行しながら各地で水彩画を描いていた。日本美術に興味を持っていて、話がつきない。コーヒーだけでなく、昼食のステーキまでごちそうになった。
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 ワナの町に入り、スーパーマーケットの前にバイクを停めていたら、隣の車の中にいた女の子が、ニコニコしながら「世界旅行しているの。?」と話しかけてきた。
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 ジョジェというその女子は両親がフランス人で、フランス語と英語の両方を話した。今は公園の建設現場で働いており、その仕事仲間の若者たちとともに宿舎へ誘われた。彼らの宿舎はモーテルだった。彼らはそのモーテルに2週間も住んでいるという。
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 シャワーを浴びると、自分に身体を伝って落ちる水は真っ黒だ。気持ちが良い。すっきりしたところで、ジョジェの亭主とおぼしきマイクが呼びに来た。彼らの部屋の窓側に小さなテーブルが置いてあり、ローソクが立っていた。シチューともう一品フランス料理が並べてあった。彼女は日本料理が好きだという。私が「トウフ」は大豆から作るんだというと、彼女は大豆を持っているから作り方を教えろというのには参った。
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 彼女はスキーの先生でもあるらしく、毎年アルゼンチンへ行くという。私の予定とちょうど合いそうなので、また再会しようと約束した。
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 次に朝、7時半には仕事場へ行くトラックが迎えに来るという。あわててコーンフレークのミルクをぶっかけた朝食をとる。外はまだ真っ暗だ。マイクが昨夜の食事の皿をせっせと洗っているのを睡眠不足の顔で眺めていると、ジョジェが出てきて、「彼の手伝いをしたらどう。」と、単語を1つ1つ区切るように言って命令した。「ハイ。ハイ。」私は頭をかきながら、命令に従った。
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 トラックがやってきた。マイクはがんばっれよと言いながら握手した。ジョジェは頬にキスをしてくれた。
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 私もトラックを追って走り出した。天気は良くなったが、寒い。山の紅葉はさらに深まった。映画「男と女」の中のシーンで、雨の日、紅葉した森の中をドライブしていくところがあるが、そのシーンのように素晴らしい。
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 しばらく走って、セントマリーの町に入った。
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 人間が見たかった。できれば、かわいい女の子がよい。もう森の風景には飽きてしまった。
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 町でガス補給。1ガロン79セントと高かったが、ハイウエイでは、97セントもする時がある。
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