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オートバイの旅日誌(39)Nigeria [5-アフリカ]

オートバイの旅(玉井洋造の旅1976) 日誌


(39)Nigeria-1977/11/25


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1977/11/25       釈放
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 カメルーンとナイジェリアの国境付近の道路は、荒れていた。国が変わるとこうも景観が変わってしまうものかと驚く。ナイジェリア北部は、まったく視界を遮るものがない平坦な土地だ。草の背丈が30センチあるかないかで、キリンやゾウがいそうな環境だ。
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 チャド湖へ行ってみる。砂漠の中の道だが、湖の町バガまでは、アスファルト道路になっていて、簡単にたどり着くことができた。しかし、そこからは湖は見えない。港は7キロ先にあるが、深い砂地で、とてもその道を往復する気にはなれなかった。
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 チャド湖から帰る途中、前方にバイクを押している若者を見つけた。どこが悪いのか見てやろうかと思ったが、今日は銀行へ行く予定だったし、多分、この近くに修理できる村があるのだろうと、見ぬふりをして横を通り過ぎた。しかし、5キロほど行ってもまたく村も民家もないので、あの青年がかわいそうになり、引き返した。もし、ガス欠なら分けてやるぐらいのガソリンはある。
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 「どこが悪いんだ」と聞くと、エンジンだという。キックさせてみたが、エンジンがかからない。ガソリンはあった。スパークプラグを抜かせてみたところ、火花は飛んでいたが、色が悪い。ギャップが大きいと思った。少し詰めて、もう一度キックさせてみたら、2回目でエンジンがかかった。
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 私たち二人は、ただお互いに言葉もなく、ニコニコするだけだった。私は先に走り出した。後ろから「サンキュー」と大声が聞こえた。
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 町に帰り着いたろころ、ガススタンドは、車とバイクですごい列だった。ガソリンが残り少ないのだ。あわてて列に入った。幸いバイクは優先だったので、持っていた容器全部に入れた。予備ガソリンは35リットルだ。カノまでの700キロはガソリンがないことを聞いていた。ナイジェリア北部は、とくに不足しているようだ。
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 カノの手前で警察署でキャンプしたところ、秘密警察の男がやってきて、私をスパイだと疑った。その男には私のような旅人は理解できないのだ。ビジネス旅行以外はすべてスパイなのだ。そこで私は自分なりに持っている人生観を説明し、日本の社会の現状を英語で話して聞かせた。私が話をすればするほど、その男は頭が混乱して、私のパスポートを取り上げ、カノの警察本部へ送ってしまった。ともかくスパイの疑いで調べを受けることになった。しかし、護送されるわけでもなく、自分でバイクに乗って行けというのだからあきれてしまう。
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 カノに着いて警察本部へ出頭したところ、そこの親分は何をしたんだと聞かれて返事に困った。あほらしい話だ。「パスポートを返してほしい」とだけ頼んだ。ここカノは砂漠を超えてくる旅行者が絶えず通行し、滞在するので、その親分も旅行者に慣れていたので、すぐ釈放された。
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 この町のキャンプ場にサハラ砂漠を超えてきた若者たちがいるというので、喜んで会いに行ってみたのだが、誰も口をききたがらない。たぶん旅行が始まったばかりだし、サハラを超えて心も身体も疲れ果てて、他の旅行者には興味がないのかもしれない。


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1977/12/06   カーボンの塊
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 カノからガソリンのことばかり心配して首都ラゴスに帰り着いた。ビザを取り直してカメルーンに戻るつもりだったが、ラゴスのカメルーン大使館は、日本とは国交がないといって発給しない。他の国の大使館では発給して、ナイジェリアでは発給しないのだ。変だね。・・・・
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 ヨーロッパの春が来るまで北アフリカで過ごすことにして、このまま、サハラ砂漠へ行くことにした。その準備のためにラゴスに1週間滞在する。ビザ、予防接種、そしてバイクの整備をする。ラゴス市内に入ってから、バイクの調子がおかしい。左シリンダーのプラグがすぐに濡れてしまい、ミスファイヤーしてしまうのだ。原因がわからない。バイクは走行距離9万キロでボロボロだ。さらにエンジンの調子が悪くて、サハラ砂漠が越えられるだろうかと心配になる。考えられるのものは、すべて調べた。シリンダーを外し、キャブを掃除した。もちろんエアクリーナも調べた。それでもわからない。シリンダーが摩耗したのだろうか。それが原因でないのはわかっていたが、それ以外に原因が考えられない。
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 やけくそになって、ある日サハラへ走り出してみたが、まったくパワーがない。仕方なしに町へ引き返した。ラゴスでヤマハの人に会い、相談したところ、なんでもないかのように「マフラーが詰まっているんじゃないの?」という。私も初歩的なメカニック知識として知っていたが、つい最近掃除したばかりで、調べてもみなかった。
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 マフラーを外してエンジンをかけたところ、元気の良い排気音がバリバリと鳴り響いた。嬉しかった。この時ほどバイクがちゃんと走ることのありがたさを感じたことはない。マフラーを調べたところ、出口に大きなカーボンの塊が引っかかっていて、排気ガスをふさいでいたのだ。
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 ガソリンの補給の不安をいだいたままニジェールの首都ニアメイへ向かった。エンジンは快調、サハラ砂漠を超える自信はあった。今までにあらゆる悪路を突破していたので、自信だけはたっぷりあった。


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